谷崎潤一郎さんは、耽美派の代表的な作家の一人です。エロシズムの妖しいさと美しさが混じり合った世界観が特徴です。昭和初期に活躍した作家さんですが、今もファンの多い作家さんで、妖しい世界に入り込むとなかなか抜け出せなくなります。今回は谷崎潤一郎さんのおすすめ作品と作品の選び方について紹介していきます。
おすすめの小説家谷崎潤一郎とは!?
1965年に亡くなるまで谷崎潤一郎さんは多くの作品を世に送り出しており、近代日本文学を代表する小説家の一人です。耽美派と言われる谷崎潤一郎さんの特徴はマゾヒズムやフェティシズム変態的ともいえるエロチシズムとそれを上回る美しく妖しい世界観が特徴です。一度、はまってしまうと読むのがなかなか止められなくなるでしょう。
谷崎潤一郎の小説のおすすめ人気比較ランキング
10位:少将滋幹の母
~内容~
「この引出物はたしかに頂戴しましたぞ」。甥の左大臣への貢物として、美しい若妻を捧げた老大納言、生涯の悔恨。そして、とり残された幼な子の尽きることのない母恋い。時の左大臣に奪われた、帥の大納言の北の方は絶世の美女。残された子供・滋幹の母に対する追慕に焦点をあててくり広げられる絵巻物。『今昔物語』などに材を取った。巻末に用語、時代背景などについての詳細な注解、および解説を付す。口絵・小倉遊亀。
(Amazonより)
価格 | 506円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 谷崎 潤一郎 |
ページ数 | 228ページ |

“母への慕情だけでなく、「滋幹の母」が如何にいい女かということを複数の男(息子滋幹を含む)の目を通じて描いている点は、倒錯した女性上位的なものを書いた谷崎の他の作品と同様で、とても好みです。直接描写されていなくても、やはり何かとエロいです。タイトルのシリアスな雰囲気とは裏腹に、特に前半は寧ろコミカルにスケベ男が描かれています。随所で登場する和歌は、教養のない自分にはほとんどがチンプンカンプンなものの、それでも話は十分理解出来ますし、ググれば解説されている歌が多く、いろいろ楽しめます。
なお、紙の書籍がないので詳細わかりませんが、今回購入したKindle版では、文章が欠けているように見える箇所が沢山ありました。「今度は自身その邸宅に駕を枉げ(で改行し、新しく次の文が始まる。以下同じ)」「努めて見て見ないふりをしていたのであったが、その人のめでたさ」「生来多才多藝の人で、顕密の両宗は勿論のこと、十種に餘る」「現存しているのは断片的な部分々」「その後はその中間僧を敬うて、常人のよう」など。他にもあります。また、「此の赤白の二’●[さんずい+帝]のE合したものが自分の肉体で…」の「E合」ように、文字化けと思われる箇所もあります。不具合であれば、修正、更新を希望します。
“amazon.co.jpより
9位:猫と庄造と二人のおんな
~内容~
猫に嫉妬する妻と元妻、そして女より猫がかわいくてたまらない男がくりひろげる軽妙な心理コメディの傑作。安井曾太郎の挿画収載。併録は美女とペルシャ猫への愛を高らかにうたう未完の小品「ドリス」。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 586円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 中央公論新社 |
著者 | 谷崎 潤一郎 |
ページ数 | 172ページ |

“中公文庫は新潮と違って挿絵があるので、楽しいです。新潮で持っていたのに、「細雪」とあわせて、中公で買ってしまいました。
もちろん、挿絵はイメージを固定してしまうマイナス効果もあったりします。例えば、原作より前に映画を見た結果、主人公のイメージが、その俳優のイメージに引っ張られてしまうなど。しかしこの挿絵は、なんともいえずユーモラスで、当時の雰囲気も感じられて、とても楽しい気持ちになります。
ストーリーについては、ささいな出来事について書かれているにも関わらず、結構サプライズの多いお話で、非常に面白いです。細かな描写も、さすがは谷崎で、「小鯵の二杯酢」とか、よだれが出てしまうし、リリーに爪を立てられるシーンも、思わず顔をしかめてしまいました。
“amazon.co.jpより
8位:谷崎潤一郎フェティシズム小説集
~内容~
女郎蜘蛛の入れ墨を背に彫り込まれた娘が、自らの裡にひそませる欲望を解き放ち、あざやかな変貌をとげる「刺青」、恐怖に取り憑かれた男の禁断の快楽を描いた「悪魔」、女の足を崇拝する初老の男と青年が、恍惚の遊戯に耽り、溺れていく「富美子の足」など、情痴の世界を物語へと昇華させた、谷崎文学に通底するフェティシズムが匂い立つ名作6篇。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 528円 |
ジャンル | 短編集 |
出版社 | 集英社 |
著者 | 谷崎 潤一郎 |
ページ数 | 208ページ |

“「富美子の足」を読んでみたくて購入しました。文豪 谷崎のユニークな一面に触れられて満足です。どの作品も人間の不可解さに満ちていて、だからこそおもしろい。作家が自分の情念を白日のもとに晒していて、その潔さにも感服。小説は全身全霊で書くものなんですね。そういう作品には嘘がない。
“amazon.co.jpより
7位:柳湯の事件
~内容~
仏陀の死せる夜、デイアナの死する時、ネプチューンの北に一片の鱗あり…。偶然手にした不思議な暗号文を解読した園村。殺人事件が必ず起こると、彼は友人・高橋に断言する。そして、その現場に立ち会おうと誘うのだが…。懐かしき大正の東京を舞台に、禍々しき精神の歪みを描き出した「白昼鬼語」など、日本における犯罪小説の原点となる、知る人ぞ知る秀作4編を収録。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 572円 |
ジャンル | 短編集 |
出版社 | 集英社 |
著者 | 谷崎 潤一郎 |
ページ数 | 224ページ |

“いろいろな純文学を読んでいて谷崎にたどり着きました。芥川龍之介が追及していた人間のエゴイズムの流れはここからミステリーやホラーへとつながっていったのではないだろうか?
“amazon.co.jpより
6位:人魚の嘆き
~内容~
東洋とも西洋ともつかない地球の片隅に位置するいづこかの国にある、奇妙な公園での奇妙な体験が綴られる。これでもかと言うほど、異国趣味が随所に散りばめられた短編。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 638円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 中央公論新社 |
著者 | 谷崎 潤一郎 |
ページ数 | 110ページ |

“どちらのお話もいかにも谷崎潤一郎節という感じで進み、最後は心に残りました。素晴らしいでした。”amazon.co.jpより
5位:金色の死
~内容~
江戸川乱歩の「パノラマ島綺譚」に影響を与えたとされる怪奇的幻想小説「金色の死」、私立探偵を名乗る見知らぬ男に突然呼びとめられ、妻の死の顛末を問われ、たたみ掛ける様にその死を糾弾する探偵と、追込まれる主人公の恐怖の心理を絶妙に描いて、日本の探偵小説の濫觴といわれた「途上」、ほかに「人面疽」「小さな王国」「母を恋ふる記」「青い花」など谷崎の多彩な個性が発揮される大正期の作品群七篇。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 960円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 谷崎 潤一郎 |
ページ数 | 288ページ |

“「燦爛」とした文壇登場時、「文豪谷崎」をゆるぎないものとした昭和時代、いずれの時期にも非の打ち所のない名作を生んだ氏であるが、あまり知られていない大正期にも興味深い作品が多かった事を端的に示す作品集だ。むしろ芥川龍之介との論争で有名な「筋が面白いのが小説」とする持論がフルに発揮されている時期とも言えるのではないだろうか。怪奇というより「映画を観る」行為が生み出す異次元感覚と恐怖を小説で表現して見せた「人面疽」、よく言われる社会主義云々より追い詰められた主人公の理念と理性の崩壊と落ちていく様のシニカルな描写が痛烈な「小さな王国」など読者を引きずり込む威力は相当なもの。「富美子の足」での足への執着に対する冷静な解析と執拗な筆致による「足への恋文」の間で文字が行きつ戻りつする様も滑稽なほど面白い。
題名となった「金色の死」は作者がその存在を後に隠そうとした作品として有名。物語の後半、絢爛たる四文字熟語と美文の放列に頭が麻痺すること必至。そこへやがて訪れる美学に食い殺された男の「金色に塗られた肉体の死」に対する賛美とも冷笑ともつかぬ散乱したエンディング、その何とも言い様ない居心地の悪さは特筆ものだ。三島由紀夫との関連を指摘するあとがきも必読。ただ、題名に因んでか、装丁に定着し難く高価な金色を使うのはいいとしても、文庫本にしては高すぎる価格設定は何とかして欲しいものだ。
“amazon.co.jpより
4位:細雪
~内容~
大阪船場に古いのれんを誇る蒔岡家の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間模様のなかに、昭和十年代の関西の上流社会の生活のありさまを四季折々に描き込んだ絢爛たる小説絵巻。三女の雪子は姉妹のうちで一番の美人なのだが、縁談がまとまらず、三十をすぎていまだに独身でいる。幸子夫婦は心配して奔走するが、無口な雪子はどの男にも賛成せず、月日がたってゆく。
巻末に用語、時代背景などについての詳細な注解を付す。(「BOOK」データベースより)
価格 | 605円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 谷崎 潤一郎 |
ページ数 | 352ページ |

“私たちが戦前の昭和の時代をイメージする場合、大きく分けて二つに分かれます。
一つは世界恐慌や飢饉が起こり窮乏する国内経済と緊迫する国際情勢のもと、二・二六事件や大逆事件などのクーデターや思想弾圧が広まりだんだんと戦争の足音が忍び寄り、日常生活もだんだんと息詰まるものになっていく暗い世相の時代、そしてもう一つはデモクラシー思想が発展、西洋文化が民衆にも広がり、文化住宅や職業婦人にモダンガール、ジャズやカフェなどの文化が華やかになり、和洋折衷のモダニズムが生まれた華やかな時代です。
「細雪」は大阪船場を中心に前者を極力排除し、後者の時代を強調して描きことにより後世の私たちに「古き良き時代」を味わわせてくれます。大阪や東京の今では老舗となっている洋食店や旅館、歌舞伎や芝居の演目などのハイエンドな風俗が描かれていることも、読者の目を楽しませてくれます。
父の亡き後は没落しつつあるものの、かつては大阪では指折りの商家であり、家柄、教養、容貌ともに評判の高い蒔岡家の四姉妹の生活で大きな問題となるのは、家の誇りが災いしかつてはたくさん舞い込んできた縁談に難癖をつけていたために30を過ぎても嫁入り先が見つからない雪子の縁談と、昔の栄華を知らずに育ったことや、父親からもあまり愛情をかけられなかったことからややひねくれてしまい、宝石商のドラ息子と家出をしたり、もう蒔岡家の財産には頼れないと職業婦人になるのだと人形作りや洋裁を習いだす妙子が引き起こす恋愛トラブルをどう処理するかで占められており、次女の幸子がその問題に終始頭を悩ませる様や、回りくどくだらだらとした文体と相まって、合理的、効率を最優先とする現代を生きる我々にはどこか世間離れしたのんきな「船場の御寮人さん、嬢さん」を思わせてくれます。
もっとも、我々から見たら滑稽とも思えるぐらいに彼女たちがこれだけ結婚に神経を使うのは、没落したとは言え格調高い「蒔岡の家の娘」であることが彼女たちのアイデンティティであり唯一無二の財産でもあり、その生活を維持し続けることが彼女たちの使命だということや、仮にふさわしくない相手と結ばれた場合に彼女たちの付き合いのある船場の人々のよからぬ噂となる懸念があることを考えれば無理のないことと言えます。彼女たちにとって「格式高い船場の娘」の格式を守り続けることが生活を守る手段でもあるのですし、そこから外れることは、自分ばかりではなく家族や親せきも信用を失うことにもつながるからなのでしょう。
ところで、細雪は蒔岡家の俗世間離れした優雅な生活の描写の中に、病気も含めて非常に鼻漏な表現が多いことに気づかされます。
鶴子を除く姉妹たちは、やれ流産だ死産だ、赤痢だ下痢だと病床に臥すのですがその表現が変に生々しくそして汚いのです。
このような描写をなぜ書いたのかと眉をしかめる人もいますが、これらのエピソードがあることによって、彼女たちが絵巻物に
いるような架空の人物ではなく生身の人間となり、性的な描写がなくともどこかなまめかしさが生まれてくるのです。
“amazon.co.jpより
3位:卍
~内容~
でもこんなことハズさんに知れたら大変ね、Be careful!
関西の良家の夫人が告白する、異常な同性愛体験――関西の女性の艶やかな声音に魅かれて、著者が新境地をひらいた記念碑的作品。
夫に不満のある若い妻・園子は、技芸学校で出会った光子と禁断の関係に落ちる。しかし奔放で妖艶な光子は、一方で異性の愛人・綿貫との逢瀬を続ける。光子への狂おしいまでの情欲と独占欲に苦しむ園子は、死を思いつめるが――。おたがいを虜にしあった二人の女が織りなす、淫靡で濃密な愛憎と悲劇的な結末を、生々しい告白体で綴り、恋愛小説家谷崎の名を不動のものとした傑作。(Amazonより)
価格 | 539円 |
ジャンル | 恋愛小説 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 谷崎 潤一郎 |
ページ数 | 272ページ |

“先ず断っておくと、本作の主題を「同性愛」抔と思ってはならない。狂言回したる園子の同性愛的熱情は、光子が有する「ナルシスト特有の両性愛的傾向」を際立たせるための、一つのスポットライトに過ぎない。蓋し本作の主題は「嗜虐的ナルシズムの極限的解放によって齎される破滅」であろう。『卍』に蔵されたこの主題は「その三十」で時限爆弾の如く炸裂し、以降の節で次々に誘爆が発生する仕組みになっている。では、その起爆剤とは何か? それは外でもない、園子の夫たる柿本孝太郎の堕落である。今迄蚊帳の外に置かれ、常にことなかれ主義に傾いてきた良識ある法学士の夫。園子の不倫を知っても尚、良識に基づいて立ち振る舞っていたその夫。彼が渦中に巻き込まれる時、この物語は相貌を根本的に変える。それ迄は社会の良識に背馳する登場人物らの物語であり、社会(と読者)は安全にその不貞を断罪できた筈が、夫の堕落によって世故そのものが、従って読者さえもが奈落に引きずり込まれるのである。その極めつけが、最後の頁で彼が口走る「光子観音」の言葉である。法と秩序の代表者あった筈の彼が、エゴイズムとサディズムに沈溺する光子を、敢えて解脱せずに衆生を救済すべく奮闘しているという観音にまで、祭り上げてしまうのである。こうして読者も亦、安全の確保された傍観者として本書を読むことは最早出来ない。苟も真にこの物語を「体験」した読者であるならば、最後のシーンを読みながら、衰弱しきった体で恍惚に浸りつつ「光子観音」を渇仰する己の姿を、ありありと思い浮かべてしまうであろう。作者である谷崎翁の、秩序や神仏、そして人倫に対する不逞と絶望は、何と深いものであろうか……
心膽を急速に冷却されたが如き戦慄を、私は本作で味わってしまった。こんなものが昭和初期に世に出ていたのかと考えると、本当に恐ろしい。真の文学とは、斯くも冱寒たる凄みを有しているものと思うと、自分の浅慮を猛省しない訳にはいかない……
サド=マゾヒズムの関係性をこれ程巧妙に描いたものを、私は知らない。マゾッホの『毛皮を着たヴィーナス』ですら、この作品の悪魔性には遠く及ばないと言っても決して過言ではない。本作はいわゆる恋愛小説でもなければ、況してや変態趣味の官能小説でもない。それもその筈で、エロティシズムに固執することが、翁の悪魔主義ではないからである。何故なら、肉体への執着とそれに基づくエロティシズムというのは、故郷を喪失し欠乏に喘ぐ存在の慟哭の一端でしかないからである。
『卍』は、驚くべき精緻さで以て描かれた「神のいない現実の辿り着く末路」を描いている。ナルシズム、サディズム、マゾヒズム……これらは、神なき世にて激しさを増す存在の慟哭である。登場人物たちはその全存在で以て、この慟哭が生む近代人の宿命を、極限の形で演じさせられたのである。他のレヴューでも言及されているように、「尼崎事件」や「北九州監禁殺人事件」そして「オウム真理教事件」のエッセンスが、その何十年も前に書かれたこの作品の中に現れてしまっている。
これらの事件の日本で起こる可能性は、既にこの作品によって開かれていた……と述べることは、果たして夸張であろうか? エロティシズムに溺れる今日の日本に開かれている末路として、本作を考えることは軽率なことであろうか?心せよ、日常は斯くも脆い。
“amazon.co.jpより
2位:春琴抄
~内容~
九つの時に失明し、やがて琴曲の名手となった春琴。美しく、音楽に秀で、しかし高慢で我が侭な春琴に、世話係として丁稚奉公の佐助があてがわれた。どんなに折檻を受けても不気味なほど献身的に尽くす佐助は、やがて春琴と切っても切れない深い仲になっていく。そんなある日、春琴が顔に熱湯を浴びせられるという事件が起こる。火傷を負った女を前にして佐助は―。異常なまでの献身によって表現される、愛の倒錯の物語。マゾヒズムを究極まで美麗に描いた著者の代表作。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 407円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | KADOKAWA/角川学芸出版 |
著者 | 谷崎 潤一郎 |
ページ数 | 126ページ |

“サディスティックな師匠、春琴に献身的に仕える佐助。愛し合う男女が必ずしも結婚という形態を取らずとも、このような愛の形があってもいいと深く納得できた。燃え立つような想いを胸に秘めながら、相手に己の欲求を伝えることなく生涯を終えた佐助。私も1度でいいからこういう愛を貫いてみたい。ただ、佐助が自分の目を針で突き刺して、師匠の醜くなった顔を見ないようにする場面は、少々行き過ぎた行為かな? と疑問を持ちました。もちろんこれは小説なので、あくまでもフィクションとして読むにはいいのですが、ちょっと現実離れしている。”amazon.co.jpより
1位:痴人の愛
~内容~
「つまりナオミは天地の間に充満して、私を取り巻き、私を苦しめ、私の呻きを聞きながら、それを笑って眺めている悪霊のようなものでした」独り者の会社員、譲治は日本人離れした美少女ナオミに惚れ込み、立派な女に仕立ててやりたいと同居を申し出る。我侭を許され性的に奔放な娘へ変貌するナオミに失望しつつも、その魔性に溺れて人生を捧げる譲治の狂おしい愛の記録。谷崎の耽美主義が発揮された代表作。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 704円 |
ジャンル | 恋愛小説 |
出版社 | KADOKAWA/角川学芸出版 |
著者 | 谷崎 潤一郎 |
ページ数 | 409ページ |

“あらすじは改めて述べるまでもありませんが、聖人君子サラリーマン・譲二が、カフェで会った銘酒屋(非合法の売春宿)の娘・ナオミを自分好みの淑女に育てたいという気持ちから引き取り、わがまま気ままに共同生活を過ごしていくうちにナオミが淫蕩で傲慢な性質を表しついには、浮気者で浪費家のナオミにひどい目に遭わされながらも彼女なくしては生きられないほどに彼女に精神的にも肉体的にも支配されていくまでを描いた小説です。
じゃあナオミはそんなに魅力的な美女なのかというとさにあらずで、彼女以上に美しい女もたくさんおりしかるべき教養を持つ令嬢や婦人と並べると途端にみすぼらしくなると譲二自身も認めており、彼女の周りにいる男たちもナオミはただ気軽な欲望のはけ口という存在以上のものではないようです。
ではなぜ譲二がここまでナオミに執着したのかということになりますが、
そこには現代にも通じるホワイトカラーの男性の置かれた立場と苦悩にあるような気がします。ホワイトカラー、つまり頭脳労働に従事するサラリーマンは、生まれながら支配階級として育てられたわけではなく、ただ学校を出たという経験だけを武器に人を管理し、人を教育し、人を率いていかなければいけない宿命にあります。しかも彼らのおかれている環境では職人や肉体労働者のように技術や腕力でモノを言わせるのは野蛮なこととされ、言葉や管理能力といった極めて抽象的なことで他社を動かしていくことを求められることになります。
そのためには学歴や肩書、経験、能力の面だけにとどまらず人格や容姿の点でも他人に常にナメられるような要素は極力排除し、常に虚勢を張っていなければならないことになります。さらに、家の中においても良き夫、良き父親でなければならず、家に帰ってもなおその威厳を保ち続けなければならないのです。
しかし、虚勢をはり続けて生きるのは時としてとても疲れるものです。まして聖人君子などと評され高給取りの譲二のような男にとってはそのプレッシャーは人一倍強いものであったでしょう。
そのような中でナオミのように、自分を馬鹿にし、うまく操ってくれる存在の女性は虚勢を張らず、自分の弱さを臆面もなくさらけ出せるかけがえのない存在なのです。ナオミはナオミで、譲二の財産と収入による豊かな暮らしや中流以上の人々と触れる中でいくら着飾ってもぬぐえない自分の生まれからくるみすぼらしさにコンプレックスを感じていたようで、彼女にとっても富裕の象徴である譲二を苛め抜くことは残酷な快感を伴う行為だったようにも見受けられますが、それだけに豊かさに慣れた女性に心から男性を屈服させることを求めるのは無理な話です。多くの女が強い男を求める中で、弱い男を受け入れてくれる女はそうはいません。弱い部分を見せたが最後、女はとたんに彼のもとを去ってしまうからです。特に中流以上の階層に属する女性にとっては「男に守られる価値のあるしとやかな女」であることがその価値を高めることであるので、男をバカにする、男のプライドを傷つけるような行為ははしたない行為以外の何物でもないのです。
昭和の初期にあってサラリーマンをはじめとする知的労働者が増えつつある中で、譲二はその男性たちの内なる苦悩と欲求不満を代弁した存在だったのではないでしょうか。
“amazon.co.jpより
谷崎潤一郎の小説のおすすめの選び方
ジャンルで選ぶ
恋愛小説
谷崎潤一郎さんの恋愛小説はマゾヒズムや女性の妖しさなどアブノーマルと言って程の変態的嗜好で溢れた一味ちがった作品です。一般受けしない内容と言ってもいい谷崎潤一郎さんの恋愛小説ですが、多くのファンが谷崎潤一郎の恋愛小説に魅了されます。美しさの極地である谷崎潤一郎さんの恋愛小説は見るものを惹きつけて離さない魅力があると言えるでしょう。官能小説に近い妖しいエロチズムを味わいたい方や美に走った最上級の純文学を楽しみたい方におすすめです。

ミステリー小説
谷崎潤一郎さんといえば耽美な恋愛小説で有名ですが、優れた探偵小説も多く書いています。本格的なトリックを使った推理小説でありながら、谷崎潤一郎さん独特の美しい世界観をグロテスクに描いており不思議な作品世界へ読者を誘い込みます。一風かわったミステリー小説を読みたい方や探偵小説と純文学の美しさを同時に味わいたい方におすすめです。

随筆
谷崎潤一郎さんの随筆も美しさをテーマにしている作品が多く見受けられます。特に日本の美、日本人の独特で芸術的な感性について語っています。美について語っているのですが、その文章もまた美しいのが谷崎潤一郎さんの随筆の魅力の一つと言えます。随筆を読めば谷崎潤一郎さんの小説の奥深さをさらに知ることができます。日本文化の美しさにふれたい方や谷崎潤一郎さんを深く知りたい方は随筆を読む事をおすすめします。
著名作品を選ぶ
谷崎潤一郎さんの作品を初めて読む方は著名作品を読んで見るのをおすすめします。谷崎潤一郎さんの代表作品である「細雪」は非常に読みやすい上に、谷崎潤一郎さんの独特の美しさもあります。テーマも家族や恋愛、四姉妹の日常など取っつきやすい内容の作品です。「痴人の愛」は谷崎潤一郎さんの作品の最も人気のある作品の一つです。「痴人の愛」は少女の妖しさに振り回されるマゾヒズムが描かれており谷崎潤一郎のエッセンスが詰まった作品と言えます。
谷崎潤一郎の小説のおすすめまとめ
今回は谷崎潤一郎さんのおすすめ作品と作品の選び方について紹介してきました。谷崎潤一郎さんは純文学の作家さんで難しいイメージを持たれている方も多いかと思いますが、文章は読みやすいのです。内容も美しさと妖しさに惹かれはまり込むでしょう。今回の紹介で谷崎潤一郎さんの本を手に取る機会になれば幸いです。
コメント