刊行されている多くの作品が文学賞を受賞し映像化され、さらには2015年に紫綬褒章(しじゅほうしょう)を授与された桐野夏生さんをご存知の方も多いでしょう。紫綬褒章とは「科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方」に授与される賞です。
桐野夏生さんの小説は巧みな構成力とリアリティのある描写が併さることでより厚みを持ち次々と読みたくなるような面白さを孕んでいます。今回はそんな桐野夏生さんの魅力と小説の数々をご紹介していきます。気になる本があれば是非手にとってみて下さい。
おすすめの小説家桐野夏生の魅力とは
桐野夏生さんの小説の魅力はダーク・ロマン溢れる世界観とリアリティある登場人物達のやりとりです。石川県金沢市で生まれた桐野夏生さんは妊娠中に友人に誘われてロマンス小説を執筆、応募し佳作当選したことから小説を本格的に執筆し初めました。
その後ミステリー第一作の「顔に降りかかる雨」で第39回江戸川乱歩賞を受賞し、ミステリー、ハードボイルドというジャンルへ独自性を見出していきました。ハードボイルド小説というのは暴力的・反道徳的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法を指し桐野夏生さんはこの手法を得意としています。
2023年最新の桐野夏生の小説
『砂に埋もれる犬』
~内容~
貧困と虐待の連鎖――。
母親という牢獄から脱け出した少年は、
女たちへの憎悪を加速させた。ジャンルを超えて文芸界をリードする著者の新たな傑作
予定調和を打ち砕く圧倒的リアリズム!小学校にも通わせてもらえず、日々の食事もままならない生活を送る優真。
母親の亜紀は刹那的な欲望しか満たそうとせず、同棲相手の男に媚びるばかりだ。
そんな最悪な環境のなか、優真が虐待を受けているのではないかと手を差し伸べるコンビニ店主が現れる――。ネグレクトによって家族からの愛を受けぬまま思春期を迎えた少年の魂は、どこへ向かうのか。
その乾いた心の在りようを物語に昇華させた傑作長編小説。(Amazonより)
価格 | 2200円 |
ジャンル | 文芸作品 |
著者 | 桐野夏生 |
ページ数 | 496ページ |
桐野夏生の小説のおすすめ人気比較ランキング
25位:メタボラ
~内容~
記憶を失った「僕」は、沖縄の密林で、故郷を捨てた昭光と出会う。二人は名前を変えて新たな人生を歩もうとするが、非情なヒエラルキーに支配された実社会に、安住の地は見つからない。孤独、貧困、破滅の予感。逃げろ!何処へ?底辺に生きる若者たちの生態を克明に描き、なお清新な余韻を残す傑作ロードノベル。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 288円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 684ページ |

“最初に読んだ桐野作品がこれで本当に良かった。『グロテスク』だったら次はなかったと思うし『残虐記』だったら間違いなく二度と読まない嫌いな作家になっていた。東京新聞に連載されていた『とめどなく囁く』を毎朝読んでいて、文章の上手さと表現の的確さにこれは何か読まなきゃと手にしたのが本作。読み終わって衝撃的な感動でしばし放心。読書の醍醐味を味わうってこういうことだったよねと、改めて「作家」って凄いなあと思わせてくれる力作です。そうそう先日『メタボラ』にひどく感銘を受けた娘が、『東京島』を図書館で借りて、のけぞる程びっくりして数ページで断念。即効返却したと言っておりました…。”amazon.co.jpより
24位:緑の毒
~内容~
39歳の開業医・川辺。妻は勤務医。一見満ち足りているが、その内面には浮気する妻への嫉妬と研究者や勤務医へのコンプレックスが充満し、水曜の夜ごと昏睡レイプを繰り返している。一方、被害者女性たちは二次被害への恐怖から口を閉ざしていたがネットを通じて奇跡的に繋がり合い、川辺に迫っていく―。底なしの邪心の蠢きと破壊された女性たちの痛みと闘いを描く衝撃作。文庫オリジナルのエピローグを収録。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 660円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | KADOKAWA/角川書店 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 336ページ |

“たとえばマニアックなブランド名や装飾物を通じて人間性を描いてゆく筆力に、まず人物としてのリアリティがあって、ひきこまれる。この医師が、自分としては完璧な、隙もない、水も漏らさぬつもりで起こしていく犯罪といい、自己演出ぶりといい、ある意味「必死」なのだろうが、最終的には、女たちの「必死」の前に、一敗地にまみれる。
孤独と表裏一体の自由を謳歌していた一人暮らしの被害者たちが、事件で踏みにじられることによって、それぞれ成長し、それまで価値を認めなかった「つながる」ということに、必死に手を伸ばしていく感じが切ない。
若い女性たちばかりの被害者の中で、間違えて襲われた中年女性が、「お前じゃない」とマジックで書かれた顛末がエピソード的でゆるく笑える。
“amazon.co.jpより
23位:天使に見捨てられた夜
~内容~
AVでレイプされ、失踪した一色リナの捜索依頼を受けた村野ミロは、行方を追ううちに業界の暗部に足を踏み入れた。女性依頼人が殺害され、自身に危険が及ぶ中、ようやくつかんだリナ出生の秘密。それが事件を急展開させた…。乱歩賞受賞直後に刊行された圧巻の社会派ミステリー。「ミロシリーズ」第2弾!
(「BOOK」データベースより)
価格 | 968円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 512ページ |

“すごい楽しい!面白い!って訳じゃないのに、先が読めなくて、なぜか一気に読んでしまいました。途中から、ホラー物?と思ってしまうぐらい先が読めなかった。
最後はもう少しグッとくる終わり方がよかったけど、よかったです。OUTしか読んだことなかったので、違ったイメージを受けました。
“amazon.co.jpより
22位:優しいおとな
~内容~
福祉システムが破綻した日本。スラム化したかつての繁華街“シブヤ”の野宿者・イオンは、闇を根城にする若者たちと出会い、アンダーグラウンドに足を踏み入れる。NGO「ストリートチルドレンを助ける会」、女性ホームレス集団「マムズ」…彼の「優しいおとな」はどこにいるのか。桐野夏生が描く、希望なき世界のその先とは。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 713円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 中央公論新社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 371ページ |

“経済が崩壊し、街に大量のホームレスが溢れるようになった近未来の日本の渋谷のストリートチルドレン・イオンの物語。最初は荒廃した社会でのサバイバル物語なのかと思いながら読み進むうち、親と子の、兄弟の間の純粋な愛情物語へと進展していった。
最後の方できょうだいの「鉄」がイオンを献身的に助けようとする辺りは、典型的な、白痴的であるがゆえの聖なる愛情であり、感動させられた。桐野さんの最近5〜10年の作品は当たり外れが激しいが(例えば『ポリティコン』は評者の考えでは外れである)、本作は大当たりと言ってよいのではないだろうか。
“amazon.co.jpより
21位:女神記
~内容~
遙か南の島、巫女の家に生まれた姉妹。六歳の誕生日、姉は家族から引き離された。大巫女となり、跡継ぎの娘を産むのだ。やがて姉のもとに食事を届けることが妹の役目に。―ひもじくても、けして食べてはならない。―だが島の男と恋に落ちた妹は、禁忌を破り、聖域に足を踏み入れてしまう。激しい求愛の果て、地下に堕ちた妹が出逢ったのは、愛の怨みに囚われた女神・イザナミだった。性と死の神話を、現代に編み直す。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 1649円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 角川書店 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 267ページ |

“桐野夏生さんの作品は好きで殆ど読んでます。この作品は他とは少し違って、時代背景も設定も「物語風」だと思います。でも芯には女性の強さや少しの悲しさがあって、そこは桐野風です。この物語の世界観がとっても好きで単行本になったら絶対買おうと思っていました。私的には何度でも読みたい作品です。”amazon.co.jpより
20位:I’m sorry, mama.
~内容~
児童福祉施設の保育士だった美佐江が、自宅アパートで25歳年下の夫と焼死した。その背景に、女の姿が浮かび上がる。盗み、殺し、火をつける「アイ子」。彼女の目的は何なのか。繰り返される悪行の数々。次第に明らかにされる過去。救いようのない怒りと憎しみとにあふれた女は、どこからやって来たのか。邪悪で残酷な女の生を、痛快なまでに描き切った問題作。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 649円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 集英社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 264ページ |

“本場のインドカレーが大好きで、機会がある度食べるのですが、すいすい食べられて、食べた後で、胃を中心に燃える様な感覚が拡がって行く、あの感覚が堪えられません。この本も、面白くてすいすい読めるのですが、後からじわじわ拡がって来る、気になる感覚があるのです。一言に集約すると、罪悪感、でしょうか。
原罪、贖い、償い、生、死、絆。望まれない出生、生まれながらの罪、虐げられる者と虐げる者、生き地獄。虐げられた者は、産まれた事を後悔し、産んだ者を怨み、憎む。
何故産まれたのか、何故産んだのか、何故生きなければならないのか、生きる事に意味があるのか。子捨てと親殺し。母を殺した主人公が、初めて絶望を知り、それが最終的に三途の川を渡るきっかけになる。人と生の根源を問う哲学小説で、難しいテーマに挑み、見事描ききった手腕は素晴らしい。思考を要求する本物の小説です。
“amazon.co.jpより
19位:リアルワールド
~内容~
高校三年の夏休み、隣家の少年が母親を撲殺して逃走。ホリニンナこと山中十四子は、携帯電話を通して、逃げる少年ミミズとつながる。そしてテラウチ、ユウザン、キラリン、同じ高校にかよう4人の少女たちが、ミミズの逃亡に関わることに。遊び半分ではじまった冒険が、取り返しのつかない結末を迎える。登場人物それぞれの視点から語られる圧倒的にリアルな現実。高校生の心の闇を抉る長編問題作。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 638円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 集英社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 288ページ |

“「ホリニンナ」という偽名を使い、現代の消費情報化社会に子供っぽい厭世観を抱きつつ生きている「トシちゃん」と個性ある3人の女友達が隣の家で母親を惨殺した少年の逃避行を興味半分で追いかける、という筋書き。主人公と友達と逃避行中の少年が交互に語る、という形式で物語が進む。最終的に「トシちゃん」がホリニンナ、なんて仮名を使わないでリアルワールドを受け止めて人生に誠実に生きていこうと決意するまでを書く。著者の桐野氏の年代を考えると、21世紀の青少年の心象にここまで迫った書き込みは良い出来だと思うし、場面がどんどん変わるので読みやすいが、著者の他作品と比べてしまうと(グロテスク等)少し成熟した大人の葛藤に欠けるかなと思う作品。桐野氏の作品のライトなテイストが好きならおすすめ。”amazon.co.jpより
18位:魂萌え!
~内容~
夫が突然、逝ってしまった。残された妻、敏子は59歳。まだ老いてはいないと思う。だが、この先、身体も精神も衰えていく不安を、いったいどうしたらいい。しかも、真面目だった亡夫に愛人だなんて。成人した息子と娘は遺産相続で勝手を言って相談もできない。「平凡な主婦」が直面せざるを得なくなったリアルな現実。もう「妻」でも「母」でもない彼女に、未知なる第二の人生の幕が開く。第5回婦人公論文芸賞受賞。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 693円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 335ページ |

“主人公は関口敏子59歳。夫の突然死から物語は始まります。
彼女はサラリーマンの夫隆之の妻として、「恙無く」暮らしてきました。その定年退職した夫の突然の死が彼女の「恙無い」人生を大きく揺さぶります。音信不通だった長男が帰国し同居を求め、遺産相続の問題にぶち当たります。おまけに、夫の愛人の登場となります。この突然の出来事に、彼女はパニックを起こしてしまいます。本作は、ここからの一年弱の間の、彼女が精神的安定を得るまでの出来事を描いています。
夫婦生活を20年、30年と過ごしてくると、表面的には問題がない(ないように努力している)夫婦でも、どこか齟齬を感じることも少なくありません。彼女の場合は、こうしたもやもやが夫の死によって、一挙に表面化してきます。今まで夫に守られて生きてきて、世の中のことをよく知らなかった彼女が、右往左往しながらも、「自分の人生を生きる」という将来への確実な一歩を踏み出してゆきます。
この小説は女性が主人公の小説ですが、その周りに登場する男たちの生き方、考え方が同性として良く解ります。定年退職後、男はそのアイデンティティを失ってしまいます。それをどう立て直すのか、それは大きな問題です。いろいろの男性が登場し、いろんな考え方を示してくれますが、いつか私もなんらかの結論を出さなくてはいけない時がきます。男性の側からも考えさせられる作品でした。
“amazon.co.jpより
17位:猿の見る夢
~内容~
十年来の愛人しか今の薄井の楽しみはない。それなのに逢い引きに急ぐところ、会長が社長の怪しいセクハラ問題を耳打ちする。家には謎の占い師が居座り、女のマンションで機嫌をとっていれば、妹が電話で母の死を知らせてくる。「なぜみんな俺を辛い立場に立たせる?」欲深い59歳の男を徹底的に描く過激な定年小説!
(「BOOK」データベースより)
価格 | 1100円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 624ページ |

“あれほど抗い戦ってきた男社会というものは、桐野さんにとってもはや嘲笑の対象となっているということなのだろうか。
大変興味深い一冊だな。
“amazon.co.jpより
16位:錆びる心
~内容~
十年間堪え忍んだ夫との生活を捨て家政婦になった主婦。囚われた思いから抜け出して初めて見えた風景とは。表題作ほか、劇作家にファンレターを送り続ける生物教師の“恋”を描いた「虫卵の配列」、荒廃した庭に異常に魅かれる男を主人公にした「月下の楽園」など全六篇。魂の渇きと孤独を鋭く抉り出した短篇集。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 693円 |
ジャンル | 短編集 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 249ページ |

“なんとも辛い短編集である。人間の隠しておきたい、そして普通は隠し通せるかもしれない、醜い心を的確に描き出している。自分に都合のいい恋物語を妄想する女。相手の本当の心を見抜くことなく、自分の生活を清算することなく、ずるずると何年も不倫する男。無意識のうちに自分がしたことに何年も気が付かない男。自分が高尚だと思う趣味に密かに浸りながら、相手の生活を軽蔑する青年。映画通りの人生を送ろうとする青年。10年耐え忍び、黙って家を出ていくことが夫への復讐だし、自分を実現することだと思っている世間知らずの主婦。確かにここにいる登場人物たちの人生は『笑うべきもの』かもしれない。『自分はここまでしない』かもしれない。けれどもやはり自分にも隠されている「心」だと認めないわけにはいかない。この小さな短編集で6回も錆びたナイフが心に突き刺さりました。”amazon.co.jpより
15位:ハピネス
~内容~
高級タワーマンションに暮らす岩見有紗は窒息寸前だ。ままならぬ子育て、しがらみに満ちたママ友たちとの付き合い、海外出張中の夫・俊平からの離婚申し出、そして誰にも明かせない彼女自身の過去。軋んでいく人間関係を通じて、徐々に明らかとなるそれぞれの秘密。華やかな幸せの裏側に潜む悪意と空虚を暴き出す。人気女性誌「VERY」連載時から話題沸騰の衝撃作!
(「BOOK」データベースより)
価格 | 792円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 光文社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 450ページ |

“中産階級といっても人気女性誌で連載された物語ということで、どれだけ共感できるのかなあとおもいながらも、近隣問題で悩んでいたので読んでみた作品でしたが、まるでウチの自治体の縮図のようで驚きました。同時に自治体って、自分の住処ってどうあるべきなのかなあ、自分はどんな所に住むのが適しているのかなあと色々考えさせられました。私は林真理子さんの作品も殆ど読んでいて、他の方のレビューから、女性同士の色々としては読後感が物足りないのかな?とも思いましたが、桐野氏の方がより人間に寄り添った描写をされていらっしゃるように感じました。林氏の描写は、リーダー格のセレブママがママ友の集まりで準備するおやつはこんなに気の利いたものだけど、格下のママが準備するおやつはこのレベルといった描写で終わることが多いような気がしますが、桐野氏の場合、このタイプの人間はこんな時、このような考え方をし、振る舞いをし、何を嫌がり、何を好むといった人間の特性がとても細かく描かれていて、さあこれから公園デビューという人にはとても参考になるんじゃないかしら。色々な価値観があるので、それぞれの特性を認めて、みんな仲良くとは、、、、簡単にならないような気がします。自分が目指している方向で、住む場所、ライフスタイルも決まってくる。要するにそういうことで、ブランドマンションに住むから、ブランド品をどれだけ揃えられたかで人間が決まるというわけではないということがとてもよく分かった作品です。”amazon.co.jpより
14位:デンジャラス
~内容~
美しい妻は絶対的な存在。楚々とした義妹は代表作の原点。そして義息の若い嫁は、新たな刺激を与えてくれる…。大作家をとりまく魅惑的な三人の女たち。嫉妬と葛藤が渦巻くなか、翻弄される男の目に映っているものは―。文豪「谷崎潤一郎」を題材に、桐野夏生が織りなす物語世界から炙り出される人間たちの「業」と「欲」。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 726円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 中央公論新社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 336ページ |

“桐野夏生さんは『ナニカアル』で林芙美子を、『IN』で島尾敏雄を描きました。この『デンジャラス』は文豪谷崎潤一郎と彼の代表作『細雪』のモデル、つまり妻松子(『細雪』では幸子)、その妹重子(雪子)を軸に据えた作品です。
語り手は重子。『細雪』の雪子のモデルとして理想化された彼女ですが華族出身の夫との結婚生活もあまり幸せではなく、戦時中は谷崎一家とともに苦労を重ねます。この重子の夫に関しては、谷崎関係の本を少々読んできた私も知らなかった事実が多く描かれて興味深く、『鍵』に登場する郁子の行為が実は重子をモデルにしていたことも意外でした。
姉の夫、谷崎に愛されたことを喜んだ重子も、やがて新時代の女性、嫁の千萬子の存在に翻弄されることになります。濃密な描写で人間の悪意を描くのが巧みな桐野さんですが、上品な関西弁のせいか本作では登場人物の駆け引きにもどこか雅さが感じられます。千萬子と谷崎の関係については二人の往復書簡を読んだ後では特に新味はありませんでしたが重子や松子の晩年の懊悩が迫真的に描かれています。
谷崎の創作の源でありながら、彼の才能と個性に翻弄される女たちの緊張関係を描いた本作。ラストのあっと言わせる展開には賛否両論あるでしょうが、私には納得できるものでした。最近読んだ『抱く女』『夜の谷を行く』はいささか期待外れでしたが、もう少し書き込んで欲しいと感じさせられる部分もあったものの、本作では桐野節を堪能できました。
文豪谷崎の巨大なエゴと渡り合った、複雑さを孕んだミューズ、重子が実に魅力的な作品です。
“amazon.co.jpより
13位:だから荒野
~内容~
46歳の誕生日、夫と2人の息子と暮らす主婦・朋美は、自分を軽んじる、身勝手な家族と決別。夫の愛車で高速道路をひた走る。家出した妻より、車とゴルフバッグが気になる夫をよそに、朋美はかつてない解放感を味わうが…。家族という荒野を生きる孤独と希望を描いて、新聞連載時大反響を呼んだ話題作の文庫化。
(Amazonより)
価格 | 858円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 459ページ |

“一時期、桐野作品のグロさやエロさに疲れて読んでなかったですが、久しぶりに面白そうなストーリーだと思って読んでみると、やっぱりはまりました!
中盤までは、家族のキャラクターの面白さが際立って、後半は命・生についてまで話が広がって、そこから家族の存在を考える深い内容になっていました。また別の作品も読みます。
“amazon.co.jpより
12位:水の眠り 灰の夢
~内容~
東京オリンピック前夜の熱気を孕んだ昭和38年9月、地下鉄爆破に遭遇した週刊誌記者・村野は連続爆弾魔・草加次郎事件を取材するうちに、女子高生殺しの容疑者に。高度成長の歪みを抱えたまま変貌する東京を舞台に、村野が炙り出したおぞましい真実とは。孤独なトップ屋の魂の遍歴を描いた傑作ミステリー。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 880円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 476ページ |

“前回の東京オリンピックの直前の東京周辺を舞台とした小説である。草加次郎事件を取り扱った小説ま珍しい。東京オリンピックを前にした国の繁栄。道路や競技施設の整備が突貫工事で進められていた。夜の酒場や風俗産業もさかんで、出入りする学生もあった。怪しい人物も入り込み好色客とそのための商材確保で設けだそうと知恵を絞っていた。週刊誌文化は大きくなりトップ屋と呼ぶ花型ライターが活躍していた。一方町の小さな工場はオリンピックとは縁のない低迷ずる処が多かった。若者文化と、親たちの考え方は衝突が多く、老人の孤独、家庭からはみ出した事件が書かれる。
草加次郎という人物は有名歌手、有名スターを脅したり、爆発する手紙を送ったり時代の雰囲気に冷や水をかけた。金銭を要求しても受け取るわけではなく真意はよくわからない。犯行は突然止んだ。作者は犯人が亡くなったという説をあげているが、動機と事件が一致している感じはしなかった。事件の中での警察官の書き方は好意的ではない。必死で捜査しても犯人の痕跡はつかめず、目星をつけた容疑者も、見当が外れる。有能で若い警察官は登場しなかった。社会のあちこちにある、落差や、時代変化による生活の不安定さは良く再現されていて、現在との共通点が多いと思った。
“amazon.co.jpより
11位:ダーク
~内容~
「40歳になったら死のうと思っている」 成瀬の獄中自殺を知ったミロは狂乱し、今まで生きてきた世界と訣別、周囲の人間を破滅させていく。圧倒的な疾走感で人間のスイッチが切り替わる瞬間を描いた傑作
(「BOOK」データベースより)
価格 | 671円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 304ページ |

“現時点では、探偵村野ミロのシリーズの最新刊(完結編?)です。今までの、ある事件の謎をミロが解決していくという、ストーリーで読ませるものではなく、『OUT』『柔らかな頬』(直木賞受賞作)に続く作品であるとおり、物語の登場人物のほぼすべての人の心の動きを軸に書いていく筆致です。
韓国の光州事件を間に挟むなど、そのスケールの大きさにはいつもながら驚かされます。桐野さんが相変わらずダイナミックでアグレッシブな作家だということがひしひしと伝わってくる一冊です。
探偵ミロのシリーズと思わないで読むことができますよ。お薦めです。
“amazon.co.jpより
10位:路上のX
~内容~
幸せな日常を断ち切られ、親に棄てられた女子高生たち。ネグレクト、虐待、DV、レイプ、JKビジネス。かけがえのない魂を傷めながらも、三人の少女は酷薄な大人たちの世界をしなやかに踏み越えていく。最悪な現実と格闘する女子高生たちの肉声を物語に結実させた著者の新たな代表作。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 1870円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 朝日新聞出版 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 464ページ |

“2流のドラマや小説は、主人公が危機に陥っても「ハア、でどうよ?」とまったく感情移入出来ないが、桐野さんの作品はどれもハラハラとし続ける。「真由!駄目だよそっち行っちゃ。早く戻っておいで!」と心の中で叫び続け、グッタリと疲れる。このまま、取り返しのつかないところまで行ってしまうのかと心配で仕方なかったが、どうにか最後は踏み止まったみたいで、良かったです。”amazon.co.jpより
9位:残虐記
~内容~
自分は少女誘拐監禁事件の被害者だったという驚くべき手記を残して、作家が消えた。黒く汚れた男の爪、饐えた臭い、含んだ水の鉄錆の味。性と暴力の気配が満ちる密室で、少女が夜毎に育てた毒の夢と男の欲望とが交錯する。誰にも明かされない真実をめぐって少女に注がれた隠微な視線、幾重にも重なり合った虚構と現実の姿を、独創的なリアリズムを駆使して描出した傑作長編。柴田錬三郎賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 506円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 255ページ |

“少女誘拐監禁事件を扱った作品であるが、読み進むに従って、物語は謎が謎を呼ぶ。冒頭で示される手紙の中で、何故「私も先生を許さない」と書かれているのかが当初の大きな謎だ。そして、謎が一つ増え、また一つ増え、最終的には、謎が謎を呼び、無限大の想像が可能となる。
「先生を許さない」という言葉の意味すら、幾通りもの解釈が成り立つ。本文中でも、この事に対する解釈が示されているが、それすら、想像の域を出ていない。
一般の推理小説とは逆のパターンの作品だ。推理小説は、最終的には謎が解明されるのであるが、本作品は、謎が深まるばかりだ。
しかし、被害者となった少女の「他人は信じられない」という姿勢は一貫していて、その上、他人の心を読む能力は卓越しているので、真実を語ろうとしなかったので、さらに謎は深まる。その心理描写の深さには、唸らされるばかりだ。
作品中で被害者は、自らを性的人間と語るが、この意図も曖昧模糊としている。この事に対しても、読み進むに従って、謎がさらに深くなる。
謎が無限大である本作品。小説という表現手段の、一つの境地が追求されている。
“amazon.co.jpより
8位:ポリティコン
~内容~
理想社会の実現を目指し、東北の寒村に建設された唯腕村は、もはや時代遅れとなったユートピア思想の残滓である。村の人間関係に倦み、強烈に女を求める青年・高浪東一は、謎の男と村に流れ着いた美少女・マヤを我がものにしようともがき、自らの運命を狂わせてゆく。理想郷を舞台に繰り広げられる、絶望郷のごとき愛憎劇!
(「BOOK」データベースより)
価格 | 748円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 494ページ |

“やや盛りだくさんの詰め込み過ぎで、途中でついていけなくなった読者もいそうな、相変わらずのディープでグロテスクな世界である。ここまで現代を笑い飛ばすことが出来れば、書いている本人はさぞや面白いに違いない。
愛読者としては、落とすところまで落とさなければ見えてこない一筋の光のような結末に、いつも満足するのであるが、今回は、予想はしていたものの、拍子抜けするほどのハッピーエンドだった。
憎むことも裏切ることも苦しむことも愛なくしてはありえないという醜悪も美なりの究極の恋愛小説は、桐野ワールドの新開地なのではないだろうか
“amazon.co.jpより
7位:夜の谷を行く
~内容~
山岳ベースで行われた連合赤軍の「総括」と称する凄惨なリンチにより、十二人の仲間が次々に死んだ。アジトから逃げ出し、警察に逮捕されたメンバーの西田啓子は五年間の服役を終え、人目を忍んで慎ましく暮らしていた。しかし、ある日突然、元同志の熊谷から連絡が入り、決別したはずの過去に直面させられる。連合赤軍事件をめぐるもう一つの真実に「光」をあてた渾身の長編小説!
(「BOOK」データベースより)
価格 | 737円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 329ページ |

“浅間山荘事件に関しては 立松和平さんの「光の雨 」の描写が生々しく、本書を読む前に一読すると 本書の視点も理解しやすくなると思います。
桐野さんの著作はほとんど読んでいますが、最後の種明かし的な告白は 推理小説のオチのように驚かされるものであり、霧野さんとしては新しい構成だったと思えます。最後の最後でそれまで首尾一貫して核心に迫らない主人公の心のうちの謎が解けるので、これはミステリーと考えたほうがいい作品なのではないかと思いました。
“amazon.co.jpより
6位:柔らかな頬
~内容~
カスミは、故郷・北海道を捨てた。が、皮肉にも、その北海道で娘が謎の失踪を遂げる。
友人家族の北海道の別荘に招かれ、夫、子供と共に出かけたカスミ。5歳の娘・有香が忽然と姿を消す。実は、 石山とカスミと不倫の関係であり。カスミと石山は家族の目を盗み、逢引きを重ねていたのだ。夫と子供を捨てても構わないと決心したその朝、娘は消えた。有香が消えた原因はもしや自分にあるのか? 罪悪感に苦しむカスミは一人、娘を探し続けるが、何の手がかりも無いまま月日が過ぎ、事件は風化してゆく。しかし4年後、元刑事の内海が再捜査を申し出る。カスミは一人娘の行方を追い求め事件現場の北海道へと飛ぶ。この一作がミステリーの概念を変えた、話題の直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
価格 | 748円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 358ページ |

“まるで磁石にひきつけられるように没頭してしまいました。わずかの時間でも先を読みたくなり、あっという間に読み終わります。失踪した女の子の結末がそのエネルギーになっているのは確かですが、それ以上に主人公の内面へ向かって深く深くえぐっていくような展開に、実は失踪して探し続けていたのは自分自身だったということに気づきます。前半は石山、後半は内海と”脇役”は変わりますが、一貫してカスミの中へ向かうという軸はぶれません。実に凝縮された一級のミステリーだと思います。
ラストは意見が分かれるところではありますが、終章の前でこの物語は終わっています。しかしあえて”付け加えられた”この最後はインパクトが強すぎて、評価が分かれるのでしょう。私は最後の一行がこれ程強烈な小説はそうそうないと思います。
“amazon.co.jpより
5位:グロテスク
~内容~
名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。ユリコの姉である“わたし”は二人を激しく憎み、陥れようとする。圧倒的な筆致で現代女性の生を描ききった、桐野文学の金字塔。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 759円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 文藝春秋 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 397ページ |

“社会的立場の高い女性には行動の自由が許される。生活に困らない収入もある。その自由が自我の肥大を生み出す。東電OL事件に興味を持って読んだ感想。本当にグロテスクである。
いみじくも作中のQ女子高の木島教師が「僕たちは学校で科学的なことしか教えていなかった。もっと人間性を教えるべきだった」と悔いるように、Q女子高という小さな世界の中に進化論的なパワーゲームの世界が縮約されている。そこで育った4人のグロテスクな女たち。
この小説は悪意に満ちている。まったく歯に衣を着せないやりとりが読んでいて爽快になるぐらい。そして4人の女性とも孤独である。孤独への恐怖が4人をねじ曲げていく。
作品中、もっともグロテスクなのはやはり和恵である。自己が分裂してしまった彼女は、しだいに社会と自分、という壁を失っておぞましい怪物になっていく。なぜ高校時代の地味な彼女が変貌したのか。それは多分、ユリコの姉が言うように、自分や世間に対して、あまりにも鈍かったから。彼女の変貌を彼女なりの「成功」と呼べるだろうか。私はそれは違うと思う。彼女が摂食障害であるというエピソードはあまり語られていないが、摂食障害というのはまさに「自分」と「世間」の境界を失っていく病気だし、その根本的な原因は和恵が直面した問題と、基本的に同じである。ミツルがカルト教団の幹部になってしまった所や、容疑者チャンの身上書(彼の作り話かもしれないが)は多少演出が大仰だと思うが、チャンの住んでいた中国内陸部の貧困と日本に来てからの底辺の生活は、現代の日本で起きている「過剰と腐敗」の鏡となっている。
女は年を取るごとに「モノ」ではなく「人」になっていく。だからモノとして扱われる売春の世界では、客も本人も辛くなっていくのである。もっと「人」として輝いていく道などたくさんあったのに。私たちは和恵や「ユリコの姉」に似た部分はあるけれども決して同じにはなれない。
“amazon.co.jpより
4位:顔に降りかかる雨
~内容~
親友の耀子が、曰く付きの大金を持って失踪した。被害者は耀子の恋人で、暴力団ともつながる男・成瀬。夫の自殺後、新宿の片隅で無為に暮らしていた村野ミロは、耀子との共謀を疑われ、成瀬と行方を追う羽目になる。女の脆さとしなやかさを描かせたら比肩なき著者の、記念すべきデビュー作。江戸川乱歩賞受賞!
(「BOOK」データベースより)
価格 | 946円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 496ページ |

“村野ミロの友人であり、ノンフィクションライターである耀子が行方不明になる。彼女とともに、彼女の恋人成瀬が彼女に預けた1億円も行方不明。1億円の出所は極道がらみ。耀子の自宅の電話から最後にかけられた相手がミロだったことから、ミロは否応なしに巻き込まれ、成瀬とともに耀子の行方を追うことになる。
村野ミロのシリーズ第1作。25年くらい前の作品で、刊行されてすぐ読み、すごく好きな作品だった。電子書籍化を機に、再度読んでも、とても新鮮で、古臭さも違和感もない。ミロが行方不明の友人を探して、苦労しながら徐々に真相に近づいていく過程がものすごく好きだ。
ミロはこの後、突如劇的に変貌していき、私たちの想像もしなかったどこか遥か遠くへ行ってしまうことになるが、この作品では、つらい過去は抱えているけれども、まだどこにでもいそうな女性で、彼女のみずみずしい感性に共感をおぼえた。
この後の彼女のことを考えると、個人的にはちょっと切ない。
“amazon.co.jpより
3位:東京島
~内容~
清子は、暴風雨により、孤島に流れついた。夫との酔狂な世界一周クルーズの最中のこと。その後、日本の若者、謎めいた中国人が漂着する。三十一人、その全てが男だ。救出の見込みは依然なく、夫・隆も喪った。だが、たったひとりの女には違いない。求められ争われ、清子は女王の悦びに震える―。東京島と名づけられた小宇宙に産み落とされた、新たな創世紀。谷崎潤一郎賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 693円 |
ジャンル | 文芸作品 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 372ページ |

“実際にはありえないんですが、すごくリアルな描写が多くて一気に読み切れる本です。映画はまだ見ていないのですが、キャストを見ただけですごい小説にフィットしている感じがあります
特に、ラストのストーリーが2分するのはとても印象的。まだどこかで東京島はあるんじゃないかな…と思わせてくれます。
“amazon.co.jpより
2位:OUT
~内容~
深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから脱け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へと導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?犯罪小説の到達点。’98年日本推理作家協会賞受賞。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 734円 |
ジャンル | ミステリー小説 |
出版社 | 講談社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 456ページ |

“発刊から10年以上たっているが、遅ればせながら桐野夏生の小説を初めて読んだ。恐ろしく衝撃を受けた。いっぺんに著者のフアンになった。さらにもっと別な著作を読みたいと思った。登場人物の心理描写がすごい。当時、連続ドラマになった(有料で制作テレビ局から配信されているらしい)というが、小説を読み進む醍醐味は時間的な制約があるドラマ映像でどこまで表現できたかわからない。”amazon.co.jpより
1位:ナニカアル
~内容~
昭和十七年、林芙美子は偽装病院船で南方へ向かった。陸軍の嘱託として文章で戦意高揚に努めよ、という命を受けて、ようやく辿り着いたボルネオ島で、新聞記者・斎藤謙太郎と再会する。年下の愛人との逢瀬に心を熱くする芙美子。だが、ここは楽園などではなかった―。戦争に翻弄される女流作家の生を狂おしく描く、桐野夏生の新たな代表作。島清恋愛文学賞、読売文学賞受賞。
(「BOOK」データベースより)
価格 | 825円 |
ジャンル | 恋愛小説 |
出版社 | 新潮社 |
著者 | 桐野 夏生 |
ページ数 | 589ページ |

“結構長編で戦時中の回顧録がメインだけど非常に読みやすい筆致でサクサク読めました。個人的には戦時中の物語をテーマにした作品は説明口調であるものが多いと感じます。どうしても時系列や戦況を必要以上に説明してしまい物語のテーマが薄れ教養ものになってしまう作品が多い。しかしこの作品はしっかりと人間を基準として描いているため読みやすいです。しかし参考文献の数はなかなか凄いですね。
現実と虚構をうまく融合させる桐野夏生のテクニックが光る一冊です。
“amazon.co.jpより
桐野夏生の小説のおすすめの選び方
テーマで選ぶ
闘う女性
桐野夏生さんの作品では過酷な状況下で闘う女性が度々描かれています。桐野夏生さんが作家を目指し始めたきっかけの一つは就職活動や職場で実感した女性差別による居心地の悪さだったそうです。20代で結婚したものの、”主婦”の自分にも違和感があったと言います。
そんな実体験から描かれるのは過酷な状況でもがく女性達は現代社会の闇と構造問題に揉まれながらも必死にもがき生きていく姿です。桐野夏生さん曰く現代ますます女性の生きづらさは悪化しています。非正規労働者の約7割は女性であり少数のエリートと大多数の非正規労働者に分かれて格差が広がっています。特に若い女の人が割りを食って、ずっと非正規労働で安い賃金で働かされているそうです。
女性、男性に限らず今だからこそ読んでほしい作品になっています。
高校生の心の闇
桐野夏生さんは闘う女性達の他に虐待やネグレクトなど様々な理由で居場所のない女の子達を描いています。特に「路上のX」ではそれぞれの理由から居場所のない女子高生3人の危うい共同生活を描いており、これを描くきっかけとして桐野夏生さんは”若い世代は専業主婦願望が強いと言われるけれど、それは未来が閉ざされているからではないか彼女たちが何を考えているのか、小説を書くことで探ってみたいと思った”と話しています。
最初はポジティブな方向に進むはずの物語でしたが、社会の構造から見るとどうしてもそういった展開にはならなかったそうです。彼女達の闘い、是非ご覧下さい。
映像化された作品を選ぶ
映画化
映画化では小説に書かれていない背景にある小道具や表情、空模様までもが私たちの目に入ってきます。それらはより世界観を精確に作り上げリアリティを強くし、物語への没入感を深くします。
桐野夏生さんの作品では「天使に見捨てられた夜」や「OUT」などが映画化されていますが、「OUT」の映画化では基本的な設定は残しているが登場するはずの人物が登場しなかったり、結末が異なっていたりと原作の小説とはまた違った物語を楽しむことができます。小説を読むことに抵抗のあるという方は是非映画を見た後に気になるものがあれば小説もご一読下さい。

ドラマ化
ドラマ化もまた映画化と同じように映像化の良さがあります。ドラマのみの魅力としては数話から構成されていることが多く1話あたりの時間が短いため映画よりも手軽に見ることができる点です。
桐野夏生さんの作品では「顔に降りかかる雨」や「柔らかな頬」、「魂萌え!」などがドラマ化されています。「魂萌え!」は2004年に毎日新聞で連載された小説で婦人公論文芸賞を受賞した作品です。ドラマでは全日本テレビ番組製作社連盟が主催するATP賞テレビグランプリの第24回ATP賞ドラマ部門最優秀賞を受賞しました。

モチーフになった事件で選ぶ
連合赤軍事件
連合赤軍事件は1972年2月19日から28日にかけて軽井沢の浅間山荘に連合赤軍が人質をとって立てこもった事件です。24時間テレビ中継されたこの事件の解決後、山岳ベースからリンチによって殺された多くの若者が見つかり大きな衝撃を世の中に与えました。この事件は広く関心を集めノンフィクション、映画、舞台、小説も数多く出版されており桐野夏生さんが描いた「夜の谷を行く」もまたこの事件をモチーフにしたものです。
女性ならではの視点で描かれた本作は事件にて逮捕され、その40年後を生きる女性主人公が中心となっています。主人公は実在しないものの実在の人物も描かれていて事実を崩さず上手く融合した作品です。彼女達が残したもの、得たもの、失ったものとはなんだったのでしょうか、是非ご一読下さい。
東電OL殺人事件
東電OL殺人事件とは1997年に東京電力で総合職として働いていた優秀な女性が殺された事件です。そしてその被害者女性が昼は大企業の幹部として働き、夜は娼婦として別の顔を持っていたことがマスメディアによって取り上げられ世間の好奇心をそそりました。
桐野夏生さんの小説ではこの東電OL殺人事件をベースとして「グロテスク」が描かれています。ベースにされているだけであり実際の事件とは違う点が多々ありますが、タイトルの通り登場人物達が「グロテスク」になっていく悪意にのまれていく姿が描かれている作品です。
東日本大震災・原発事故
「バラカ」は東日本大震災・原発事故後のあったかもしれない世界を描いた小説です。原発4基が全て爆破し、東北から東京まで東日本の大半が「避難区域」となり首都を大阪に移さざる得なくなった世界、警戒区域で発見された「ばらか」としか言葉を発しない少女を巡り物語は交差していきます。
フィクション作品であるもののリアリティのある描写はまるで自伝を読んでいるかのような心地にさせられさらにボリューム、スリルを併せ持つ本作は思わず次々と読み進めてしまう作品です。是非この機会にお手に取り、ご一読下さい。
小説の長さで選ぶ
長編小説
桐野夏生さんの本領とも言える長編小説はリアルな人間を描いたミステリー小説やロマンス小説、ジュニア小説などがあります。「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞を受賞、「out」で日本推理作家協会賞を受賞、「グロテスク」で泉鏡花文学賞を受賞等多くの長編小説が文学賞を受賞しています。
ボリュームある内容であるにもかかわらず次々とページをめくってしまう読み進めてしまう文章や展開が魅力で、長編ながらも読みやすい小説です。
短編小説
桐野夏生さんといえば長編小説が有名ですが、短編小説も豊富に刊行されています。作者の描きたいものや作風がわかりやすく手軽に味わえる短編小説は桐野夏生さんのファンや初めて桐野夏生さんの小説を読むという方にもオススメです。美味しいところを詰め込んだような短編集はお得感があり、桐野夏生さんの特徴である支配構造を描くダーク・ロマン「奴隷小説」や退廃的で自己完結型の人間を多種多様に描いた「ジオラマ」など刊行されています。
また村野ミロシリーズの第4作目として短編小説4作からなる「ローズガーデン」はミロシリーズのファンには見逃せない作品です。

桐野夏生の小説のおすすめまとめ
いかがでしたか?既に著名な桐野夏生さんですが、最初に執筆し佳作入選した小説のジャンルがロマンス小説であったり、森園みるくのレディースコミックの原作を手がけていたりとハードボイルド小説で有名な桐野夏生さんからは想像できない作品も執筆しています。
また多くの作品がドラマ化映像化共にされているため幅広い人に楽しんでいただける作品です。桐野夏生さんのファンだという方もまだ読んだことのないという方も、もし気になる作品があれば是非この機会に手にとってご一読下さい。
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